【イラストで学ぶ身近なリスクと対策】第54回 高圧線近傍でのクレーン災害
1.はじめに
9月1日は防災の日。1923年(大正12年)9月1日午前11時58分に首都圏を襲った唯一の巨大地震、関東大震災(M7.9)が発生(南関東で震度6〈当時の最高震度〉)したことで制定されました。被害は津波・土砂災害によるものを含めて、死者・不明10万5000人余、住宅全半壊21万余、焼失21万余に及び、京浜地帯は壊滅的打撃を受けました。「災害は忘れた頃にやってくる」は寺田寅彦の有名な言葉。世界の地震は「9割が環太平洋地震帯」で発生。日本付近は4枚のプレートがあるので、世界一の「地震大国」です。
2.クレーン等の分類と移動式クレーンの死傷災害の状況〔平成30年~令和4年〕
(1)クレーン等の死傷災害は、クレーン・移動式クレーンに区分されており、玉掛け災害は両クレーンに含まれている。移動式クレーンは大分類で、「トラッククレーン・車両積載形トラッククレーン(以下、積載形クレーン)・ホイールクレーン・クローラクレーン・浮きクレーン」がある。
(2)移動式クレーンの平成30年以降5年間の死傷災害の状況
〔※〕移動式クレーンの設置数は約7800基(令和3.12.31)現在。
3.高圧配電線近傍での積載形クレーン災害2事例
【災害1】高圧配電線の柱上変圧器の上部に積載形クレーンの先端が激突し作業者2人が感電
〔作業環境等〕都会では日本の高度成長期(1955~73〈昭和30~48年〉年)に、街路樹として高木〔樹高10m以上に成長〕を、緑化・緑化の掛け声で多数植採。昭和48年に植えた樹木も50年目となり、かつ道路の拡幅・共同溝設置などで主根を切断され倒木・枯れ枝落ちが多くなったため、造園会社が多数の場所で伐木を行っている。樹高10m以上になった高木〔銀杏・欅・百合の木など〕は、高圧配電線の高さ以上になり配電線に絡まっている。街路樹の欅や銀杏の枝葉が高圧配電線に絡まりが著しくなり、自治会から区に伐採の要望書が提出された。区の予算で樹高10m以上になった高木は樹高9m以下に伐木〔主枝間引き含む〕を行うことになり、伐木を請け負った地元の造園会社は、伐木は高所作業車・枝葉はパッカー車・主枝収集は積載形クレーンで行うことになった。…
執筆:中野労働安全コンサルタント事務所 所長 中災防安全衛生エキスパート 中野 洋一
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