【裁判例が語る安全衛生最新事情】第447回 A会社セクハラ事件 無断での写真撮影行為に使用者責任 無断での写真撮影行為に使用者責任
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、派遣社員としてA社に派遣され、コールセンターである派遣部署でオペレーターとして勤務していたが、派遣部署が被告Y1会社に事業承継された。そのころからオペレーターから事務職となってコールセンターの運営に携わるようになり、Xはその後、正社員になった。
Xは、平成27年8月、Y1社の取締役に対し、電子メールで、上司Y2が無断でⅩの写真を撮影していることや、しつこく飲みに誘ってくることなどを報告した。また、平成28年1月15日にはY2が女子トイレ前で不審な動きをしているとしてY1社に対応を求めた。さらに、Xはハラスメント研修をしていた弁護士を通じてY1社にY2からセクハラを受けている旨申告した。平成29年1月28日、取引先が主催したY2の送別会があり、その帰りのタクシー内でY2は、Xの手や太ももを触り、Xからやめてくださいと言われると肩か腰あたりを抱き寄せるような動作をするなどしたので、Xはタクシーを降りて徒歩で帰宅した。その後、Y2は、Xに対してラインで「好きだ」「好きだ。ありがとう」などのメッセージを送った。
Xは、平成29年2月2日に、総務課長と面談して、タクシー内の行為について話した。総務課長は、Y2に確認したところ、Y2はそれを認めたので、平成29年2月23日付で、Y2を諭旨解雇した。その後、Xは、適応障害を発症し、就労不能になったとして労災申請し、平成29年11月に労災認定された。
Xは、Y2に対しては不法行為責任、Y1社に対しては使用者責任、安全配慮義務違反による損害賠償責任があるとして本件訴を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、Y2の不法行為
(1)Y2のタクシー内の行為はXが拒否してからも、直ちに止めることをしなかったというものであって、かかる行為がXの性的自由を侵害し、不快感を生ぜしめる行為として、不法行為を構成することは明らかである。そして、その直後に「本当に好きだ○子」などのメッセージを送った行為についても、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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