【社労士が教える労災認定の境界線】第369回 船の補修工事で作業員が熱中症に

2024.09.26 【安全スタッフ】
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災害のあらまし

 船舶の修理などの業務を行うY社の社員Xは、サウジアラビア西部の港町ヤンブーへの出張を命じられ、そこで浚渫船(河川や港湾で水底の土や砂を掘り取って水深を深くするための船)のバケット(水底の砂などを掬い上げるための大きなスコップ)補修工事に従事することになった。

 某年8月15日にヤンブーへ到着した後、同月17日から屋外での作業に従事したが、同月19日から体調不良を訴えるようになり、翌20日から休養した。

 その後、サウジアラビア現地の医師の診察を受けるものの体調は回復せず、むしろ悪化の一途をたどり、治療の甲斐なく同月29日に死亡した。

判断

 Xの死亡は、暑熱環境下で作業を行ったことで熱中症となり、脳症や腎機能障害などを発症したことが原因と判断され、業務上による災害と認定された。

解説

 熱中症の症状には熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病があり、熱中症が発生した際には重症度に従って軽症(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類される。

 Ⅰ度の症状としてはめまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗などが挙げられ、Ⅱ度の症状としては頭痛、嘔吐、倦怠感などが、Ⅲ度の症状としては意識障害、けいれん発作、肝・腎機能障害、血液凝固異常などがそれぞれ挙げられる。

 Ⅰ度であれば…

執筆:一般社団法人SRアップ21 宮城会
社会保険労務士事務所たすく 代表 中島 文之

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2024年10月1日第2459号 掲載
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