【ポジティブに考える!改正育介法対応】第2回 残業免除の対象拡大 全員の働き方見直しを “当事者のみ優遇”避ける/佐藤 有美
育児中の社員は定時退社が前提
「フルタイム正社員」は長時間の残業がマストであって、幼い子の育児をしながらでは難しい、という意識は根強い。たとえば、一緒に育児を担うパートナーは「フルタイム正社員」、そして、長時間労働である、だから、自分が育介法の短時間勤務制度を利用できる限り利用しよう。子も少し成長したから、定時退社であれば、もう少し長く働けるけれど、残業ができないから「フルタイム正社員」に戻れないのは仕方がない。これまで、育児の当事者、そして多くは女性当事者が、このような選択をしてきた。
育児に携わっている労働者は、短時間勤務制度を利用していても、フルタイムで働いていても、どうしても定時退社が原則になるし、子の体調不良などによる突発の遅刻・早退・休暇が避けられない場合がある。職場が残業することを前提に業務を回していると、「定時退社」するスタッフの分の業務を上司・同僚が肩代わりしなければならない。
ただでさえ多い残業がさらに多くなり、年次有給休暇は取得しにくくなる。業務上も、どうしても、育児中のスタッフを、他のスタッフと同様の業務のメンバーに組み込むことにはネガティブになってしまう。さらに、他のスタッフの手持ちの業務の負荷は重くなる。同じ「フルタイム正社員」なのになぜ自分の私生活は尊重されないのか、と不満を抱くのも無理はない。
「男性正社員の約3割が子の年齢が低いうちでも残業をしながらフルタイムで働くことを希望し、女性と比較すると非常に高い」という指摘がある(令和5年6月19日付厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会報告書」)。育児期の働き方に関する希望を尋ねた調査で、…
筆者:西脇法律事務所 弁護士 佐藤 有美
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