【裁判例が語る安全衛生最新事情】第450回 大阪建設アスベスト2陣、3陣事件① ばく露はメーカーに想定し得た事態 大阪地裁令和5年6月30日判決
Ⅰ 事件の概要
原告らは、建設作業などに従事した際に石綿関連疾患にり患したと主張する者またはその承継人で、180人超に上る。被告らは石綿含有建材(吹付け材を含むが外装材は除く)を製造・販売していたメーカー21社。建設アスベスト訴訟については、最高裁が令和3年5月17日に、神奈川1陣、東京1陣、京都1陣、大阪1陣事件の判決を出した。さらに、最高裁は令和4年6月3日に神奈川2陣事件の判決を出している。本判決は、以上の諸判決を受けて、大阪2陣、3陣事件の一審判決である。なお、令和3年5月17日の判決を受けて、国は被災者側と和解する方針を採用したため、本件では国は被告に入っていない。そのため、従前の建設アスベスト事件と比較すると、かなり論点が簡潔になっている。
今回は、これまでの最高裁判決の到達点が詳しくまとめられているので、紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、国に対する国家賠償請求について
労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために安衛法に基づく規制権限の行使をしなかったことは、屋根を有し周囲の半分以上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部(屋内建設現場)の建設作業(石綿吹付け作業を除く)に従事して石綿をばく露した者のうち、労働者との関係においても、また、安衛法2条2号で定義された労働者に該当しない者(一人親方、個人事業主など)との関係においても、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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