【見直すべきは何なのか…労働基準関係法への提言!】リレー連載 第1回 労働者概念 「耐用年数」を迎える 自律分散的就労が増加へ/大内 伸哉
厚生労働省は現在、「労働基準関係法制研究会」(以下「研究会」と略す)を立ち上げ、労基法などの法改正についての検討を進めている。本連載では、労働法学者のみなさまに労基法に関する課題などについて、ご意見をうかがう。(編集部)
自民党総裁選で話題に上がらず
先の自民党総裁選では、解雇法制や労働市場改革は話題に上ったが、研究会で扱われている「労働基準関係法制」は主要な論点になっていなかった。研究会が扱うのは、(解雇を除く)企業内の労働関係のルールに関するミクロなテーマだが、現在、社会で関心を集めているのは、賃上げなどの当面の課題に加え、急速なデジタル化の進行、労働力人口の減少、グローバルな競争の激化がもたらす影響など労働市場全体に関するマクロなテーマだ。企業は競争を勝ち抜くため、優秀なデジタル人材をいかにして集めるかに腐心し、また必要に応じた人材のリシャッフルも考えているが、その円滑な推進には適切な労働市場政策が不可欠となる。総裁選での論争は、企業の関心や国民の不安が、主にこうしたマクロなテーマに向けられていることを反映したものといえる。
とはいえ、企業内のミクロな問題を軽視できるわけではない。日々の労働関係において労働基準関係法制が果たす役割は大きい。とくに多くの国民も政治家もあまり気付いていないが、研究会がきちんと採り上げている重要テーマが「労働者」概念だ。
労基法の前身となる工場法は、先行するイギリスなどと同様、産業革命後の工業化によって生じた労働問題を解決するために制定された(1911年制定、16年施行)。労基法は、工業の枠を超え、あらゆる職業に適用されるものとなったが、保護対象者は、工場労働者をモデルとした、指揮監督下(使用従属関係下)で働く者に限定された(個別的労働関係法の他の法律もほぼ同様)。
しかし、このような工場労働者モデルの労働者概念の「耐用年数」が切れつつある。現在は、…
筆者:神戸大学大学院 法学研究科 教授 大内 伸哉
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