【ケーススタディー人事学Q&A】第17回 退職金規定の条ずれ 懲戒解雇は訂正後 請求権放棄書も選択肢に/西川 暢春
2024.10.31
【労働新聞】
【Q】 A物産では、社員Bによる総額1億円の横領が発覚した。懲戒解雇を行うこととなり、就業規則を確認したC総務部長は顔面蒼白に…。退職金を規定する条文には「第55条に定める懲戒解雇の場合を除いて退職金を支払う」との文言があるが、実際には第56条だったのだ。果たして、退職金規定の有効性は?
誤りが明らかか否か
【A】 就業規則に誤記があった場合も、使用者が主張するとおりに誤記を正せば労働者にとって不利益な結論になるという場合、使用者からの誤記修正の主張は簡単には認められない。
最近の裁判例にも、私傷病休職に関する休職事由を定める就業規則の規定の誤記が問題になったものがある(京都判令3・8・6=丙川商店事件)。この事案では、本来、休職事由として「業務外の傷病により欠勤し3カ月を経過しても治癒しないとき」と書くべきところを「業務上の傷病により欠勤し3カ月を経過しても治癒しないとき」と記載してしまっていた。
会社は、私傷病で就業できなくなった従業員について、この規定を適用して休職させ、従業員が休職期間満了までに復職できなかったため、退職扱いとした。しかし、裁判所は、…
筆者:咲くやこの花法律事務所 代表弁護士 西川 暢春
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令和6年11月4日第3471号12面 掲載