Ⅰ　事件の概要

　原告Ｘは、昭和54年４月に当時の郵政省に雇用され、日本郵政公社を経て平成18年に被告Ｙ銀行が設立されてからはＹ銀行に雇用されてきた。Ｘは、Ｙ銀行に対して、平成19年９月28日以降、上司から恣意的に担当業務を制限されたり、同僚から悪口をいわれたりする嫌がらせを受け続けたとして、職場環境配慮義務を怠ったと主張して金１億1000万円の損害賠償を求めた。Ｘの主張する嫌がらせ行為は、65項目に上っているが、そのうち一部は消滅時効が完成しており、また、多くは請求棄却されている。

Ⅱ　判決の要旨

１、消滅時効の成否

　Ｘの主張する各行為は、Ｘが配属されていたそれぞれの職場において担当させられていた業務の内容、各職場におけるＸに対する評価、Ｘの申告に対するＹ銀行の対応、各職場における上司らのＸに対する業務上の注意や指示その他の言動、各職場でのＸに対する同僚らの言動など、各職場における、特定の時期や時点における担当するべき業務の決定やＸへの対応、上司や同僚の特定の言動を前提として、これらにつき、その各場面において、それぞれに、Ｙ銀行がＸに対する職場環境配慮義務を怠ったものと主張するものである。このように、…

執筆：弁護士　外井 浩志