【裁判例が語る安全衛生最新事情】第456回 陸上自衛隊飛行班隊員自殺事件 日常的な暴言で慰謝料2000万円超 札幌地裁令和6年4月15日判決
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、防衛大学校卒業後、平成28年4月に陸上自衛隊に入隊し、その後平成29年1月に陸上自衛隊第7師団第7飛行隊飛行班に配属された。亡Aは、航空操縦士として勤務していたが、上司であるB飛行班長から、数々のパワハラを受け、さらに、そのB班長は整備班長Cが不仲であって、両班長間の調整が行われることがなかったので、BとCとの間で板挟みとなり業務が停滞していた。さらに、通常業務に加えてホイスト訓練などの担当を指示されたことから、直近の2カ月間はかなりの長時間労働をさせられており、令和2年7月19日に自殺するに至った。
亡Aの両親であるX1とX2、その兄弟であるX3、X4、X5らは、被告Y(国)に対して国家賠償法1条1項または安全配慮義務違反の債務不履行による損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告国の責任
亡Aは、上司であったB飛行班長から「バカ」「アホ」「死ね」などの暴言を日常的に受けるようになった。また、C整備班長がBと不仲であり、班長間で直接の調整などが行われることがなかったため、亡Aは、BとCとの間で板挟み状態となり、業務が停滞するようになった。これらの状況に加えて、亡Aはホイスト訓練などの担当を指示されたことから、令和2年5月17日から同年6月16日は68時間30分、同月17日から同年7月16日までは94時間45分、同月17日は6時間45分、同月18日は12時間45分の超過勤務を余儀なくされ、同月19日に自殺に至ったことが認められる。
2、亡Aの慰謝料
以上のとおりのパワハラの態様および本件自殺に至る経緯、…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら