【裁判例が語る安全衛生最新事情】第458回 ニホンフラッシュ事件 転倒事故の再現困難でも予見可能 徳島地裁令和4年4月11日
Ⅰ 事件の概要
被告Y社は、住宅および住宅関連部品の製造および販売などを目的とする会社である。
被災者Aは、Y社の従業員であり合板の仕分け業務を行っていたが、平成30年11月21日、Y社の工場内のMSラインで木製合板を積んだ本件台車を同僚のBとともに移動させていたところ、本件台車が転倒し、本件台車と積荷の木製合板の下敷きになり死亡した。本件事故直後に労働基準監督署の調査が行われ、また、警察も3回ほど捜査して検証作業が行われた。労働基準監督署からは指導票が交付されたが、警察からは特に刑事処分を受けることはなかった。
なお、本件台車の形状は、底面が96㎝×100㎝のほぼ正方形、床面からの高さは196㎝の縦長のものである。
亡Aの相続人は、原告X1(父)とX2(母)である。X1、X2は、被告Y社に対し、安全配慮義務違反または不法行為法上の注意義務違反を理由として損害賠償請求訴訟を起こした。
Ⅱ 判決の要旨
1、本件事故の状況
本件事故は、亡AとBが前後に分かれて合板を積み込んだ本件台車を2人で移動させていたところ、本件台車が進行方向である亡A側に転倒し、亡Aがその下敷きになったものであって、本件台車の転倒した原因は、直接的には、本件台車がバランスを崩し、安定した状態を保つことができなくなったことによることは明らかである。
そこで、本件台車がバランスを崩した原因について検討すると、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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