【裁判例が語る安全衛生最新事情】第459回 新潟市民病院事件 経験浅く相当重い心理的負荷と評価 新潟地裁令和4年3月25日判決
事件の概要
被告Y市は、市民病院(以下、「Y病院」という)を設置し運営する地方公共団体である。亡AはY病院で勤務しており後期研修医である。亡Aは、もともとは看護助手であったが、夫であった亡Bの勧めから医師を目指し、平成25年には国家試験に合格して研修医となり、平成27年4月から後期研修医としてY病院で勤務して消化器外科に配属されていた。
その後、平成27年9月ごろには、亡Aは、うつ病エピソードを発症しており、そのころから勤務を休んで自宅で静養していたが、平成28年1月25日にかけて、市内の公園内で睡眠薬を服用して自殺した。
夫であった亡Bが訴えを提起したが、訴訟係属中に死亡(自殺)したため亡Bの両親X1、X2が訴訟承継した。なお、新潟労働基準監督署長は亡Bからの遺族補償請求などにつき業務上災害と認め、遺族補償一時金として4172万2000円が支給されている。
X1らは、Y病院の過重な業務によって亡Aがうつ病にり患し、自殺したとして、一次的には国家賠償法1条1項に基づき、二次的には安全配慮義務違反として損害賠償訴訟を提起した。
判決の要旨
1、業務の過重性
(1)Y病院での労働時間数
新潟労基署長は、出勤票で出勤の押印がある日の所定労働時間、宿日直・時間外労働勤務命令票で時間外労働時間の自己申告が認められる時間および手術記録のうち手術時間などを客観資料に基づき特定できる労働時間などとして積算し、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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