【社労士が教える労災認定の境界線】第374回 出張先のホテルで心臓性突然死
災害のあらまし
医療機器販売A社の営業マンX(以下「X」とする)が出張先のホテルの客室内で倒れているところをホテル従業員に発見され、救急搬送されたが病院で死亡が確認された。死亡原因は「心臓性突然死」であった。請求人である被災労働者Xの妻Y(以下「Y」とする)が死亡したのは過重労働が原因であるとして労災請求を行った。
判断
本件の発生前、Xは広域ルート営業に従事する労働者であった。出張が多く移動には社用車をもっぱら一人で運転していた。営業用の資料を大量に携行する必要があるため社用車での移動を余儀なくされていた。また毎週月曜日は業務の報告と予定について情報共有するため営業会議へ出席する必要があった。
Xが発症した「心臓性突然死」は脳・心臓疾患労災の認定基準と認められる。その原因として、過重負荷のうち「異常な出来事」「短期間の過重業務」は認められなかったが、「長期間の過重業務」で労働時間は発症前1か月に100時間、2~6カ月平均で月80時間を下回ってはいたが、出張が多く事業場外における移動を伴う業務が労働時間以外の負荷要因と認められ、業務上の疾病とされた。
解説
今回の業務上外の判断基準が労働時間数だけではなく、労働時間以外の負荷要因を加えて業務と発症との関係性が強いと評価できることを明確化した。
本件の労働時間は、…
執筆:一般社団法人SRアップ21 東京会
髙橋社会保険労務士事務所 所長 髙橋 雅人
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