【ジョブ型雇用と人事権】第8回 評価制度の課題 年功序列的な運用に スキル上昇の有無問わず/伊山 正和
成果の定義が必要に
雇用契約は、従業員が労働力を提供し、雇用主がこれに対して賃金を支払うことによって成り立っている。そのため雇用においては、従業員がどのような労働力を提供すべきか、そしてどこまでの提供があれば、どれだけの賃金が支払われるのかが明確に特定されていなければ、契約内容自体が定まらない。こういう観点から雇用を考えたとき、あらかじめ従業員が従事すべき業務の内容が特定され、その特定された業務がしっかり行われたときに賃金が支払われるという仕組みがとられることが自然な流れであるといえる。このようにして、職務の内容を特定して、これと紐付けて賃金を定める方法は、ジョブ型雇用と極めてなじみやすい。それゆえ理屈のうえでは、雇用は本来、ジョブ型によって成り立つ方が分かりやすいといえる。わが国においても、パートやアルバイトで限定的な職務に従事させるための人員を雇い入れたり、即戦力を期待して中途採用者を募る場合には、同様の発想に立っていることが多い。
しかし、いわゆる新卒一括採用の方法で雇い入れ、長期間にわたって稼働することを前提とした従業員については、雇入れ時に割り当てた業務がそのまま固定されるとは限らない。その場合における提供すべき労働力とは、会社が適宜に求めた業務へ臨機応変に対応していくことであり、抽象的に把握されるに留まる。提供すべき労働力の内容自体が抽象的である場合には、…
筆者:京都総合法律事務所 弁護士 伊山 正和
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