【裁判例が語る安全衛生最新事情】第460回 冷凍食品製造工場事件 危険な作業の指導せず注意義務違反 神戸地裁姫路支部令和3年11月15日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y社は、冷凍食品などの製造・販売を主たる業務とする会社であり、原告Xは、本件事故までY社との間で16年間有期労働契約を締結してきた。Xは、Y社工場の2階の製麺部門で勤務しており、そこに箱盛機(本件機械)があり、その清掃を担当して、業務を行ってきた。その清掃方法は、Y社では清掃に関するマニュアルが定められており、また作業現場には職長Mが作成した「作業要領書」が存在した。Xは、清掃の際に、本件機械の搬送面に登って本件機械の清掃をしていたが、職長Mから「なぜ登っているのか」と尋ねられて「清掃しづらい」と述べた。そのため、Mは平成29年2月に、搬送棒の清掃がしやすくなるよう長ブラシを利用して搬送面に登らなくとも搬送面の清掃をすることができるようになった。しかしながら、Xは、その長ブラシができてからも搬送面に登って作業を続けていた。
Xは、普段どおりの方法で作業をしようとして、本件機械の底板に左足を置き、右腕、右脇で横行柱を抱え、右腕、右脇で身体を持ち上げ土台にあった右足を、左足が置かれていた底板に置いた際に右肩に痛みを生じた。その痛みは、平成29年8月、右肩腱板断裂、それに伴う疼痛と挙上困難であると診断された。Xは、平成30年3月末で契約を更新されず退職した。
姫路労働基準監督署長は、Xの障害を障害等級12級と認定した。Xは、そのような作業方法を採らせたことはY社に安全配慮義務違反があったとして、退職後、Y社に対して損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、原告Xの採った作業方法
Xは、平成28年11月~平成29年1月ごろ、職長Mから本件機械の搬送面上で作業しているのを発見され、その理由を問われたうえで、長ブラシが準備されているにもかかわらず、それ以降も本作業方法による清掃を続けたこと、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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