【裁判例が語る安全衛生最新事情】第461回 奈良県職員自殺事件 時間外勤務軽減せず注意義務違反 奈良地裁令和4年5月31日判決
事件の概要
被災者Aは大学卒業後、平成17年4月に被告Y県に採用され、平成26年4月からは教育委員会教職員課給与係となり平成28年4月からは、砂防・災害対策課災害防止係として勤務していた。教職員課給与係の時期に、亡Aは、「仕事がわからない、しんどい」旨を訴え、異動の希望を出しており、平成27年3月下旬~4月上旬にはうつ病エピソードを発症していた。平成27年11月には、亡Aの自宅での様子を見かねて、祖母Bは、Y県の人事課を訪問して、亡Aが疲労しているので異動してくれるように訴えた。Y県はそれを受けて、平成28年4月に亡Aを異動したが、希望していた土木事務所ではなく、砂防・災害対策課であったことから、亡Aは落胆していた。配転後も残業は多く、亡Aは、精神科のクリニックに、死亡するまで合計15回通院するような状態であった。亡Aは、平成29年5月21日に自殺した。
地方公務員災害補償基金奈良県支部長は、亡Aの自殺を公務災害と認定し、遺族補償年金などが支給された。
原告X1(父)、X2(母)は、Y県を被告として、国家賠償法1条1項または安全配慮義務違反による損害賠償請求訴訟を提起した。
判決の要旨
1、教職員課給与係の業務(亡Aの業務の過重性)
亡Aは、教職員課給与係に在職中の平成27年3月から同年4月にかけて、1カ月当たり150時間を超える時間外労働に従事し、かつ、その間に…
執筆:弁護士 外井 浩志
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