【裁判例が語る安全衛生最新事情】第462回 青森市職員事件 職場復帰後の時間外労働管理怠る 青森地裁令和4年9月27日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは大学の文学部を卒業し、平成7年に青森県浪岡町の教育委員会に就職して同教育委員会で勤務していたが、平成17年4月に浪岡町が青森市(Y市)と合併し、Y市の教育委員会に配属され、平成25年4月よりY市教育委員会浪岡教育事務所で教務課主事をしていた。そのころから浪岡地区の成人式を開催する業務を担当した。そして、成人式終了直後(平成26年1月13日)、職場で嘔吐の上で廊下で意識を失い、脱水症、過換気症候群により入院をした。そして、合わせて適応障害のり患も判明した。さらに、その後、弘前大学附属病院婦人科に入院し、平成26年3月末に卵巣腫瘍の摘出手術を受けた。
平成26年4月にY市教育委員会の総務課に異動となり、同年4月末に復帰した。その後も、Xは体調不良で、断続的に弘前大学病院精神科を受診して治療を受けており、平成27年9月には同精神科を受診し、同年10月には「抑うつ状態」と診断されて同年10月9日から同年11月4日まで病気休暇を取得した。
なお、Xは、平成26年1月23日の脱水症、過換気症候群、適応障害は公務上の疾病であるとして公務災害の申立てをしたが、いったんは認められたものの、審査請求で覆され、その後平成29年3月に再度公務上と認定された。
Xは、平成25年から平成27年までの職務に関し、Y市に勤務時間・業務負担などの管理に関する安全配慮義務違反があり、さらにY市は公務災害認定を妨害し、認定後の手続きを懈怠する安全配慮義務または信義則上の義務を怠ったとして800万円の慰謝料請求訴訟を起こした。
Ⅱ 判決の要旨
1、発症前の時間外勤務の時間数
XとY市の時間外労働時間数の主張には大きな隔たりがあるが、公務災害における審査請求での本件裁決が認定したXの時間外労働時間数についてはY市も争わないので、Xは、…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら