【裁判例が語る安全衛生最新事情】第463回 環境技術研究所事件 化学物質過敏症で企業責任認める 高松地裁令和5年3月24日判決
事件の概要
原告X(女性)は、大学の理学部化学科を卒業し、他の企業を経て、化学物質や有機溶剤の検査、屋内作業場の環境測定などを行う会社であるY社に勤務した。Xは当初はパートタイマーであったが、平成25年4月に正社員となり、本社1階にある分析室で薬品などの検査や屋内作業場の環境測定などの作業に従事したり、アスベストの分析作業も行うようになった。
Xは、平成26年5月ごろから身体の不調を訴えるようになり、県立中央病院で治療を受けるようになって、平成27年6月ごろには配置転換により事務作業を担当したが、同年9月からはアルバイトとなった。
平成28年1月には、Xはさらに国立高知病院で検査を受けて化学物質過敏症と診断され、療養費について労災申請をしたところ、所轄労働基準監督署長は業務上として支給決定をした。Xは同年2月29日でY社を退職した。同年12月には、障害基礎・障害厚生年金の障害等級2級15号に認定され障害者となり、障害厚生年金と障害基礎年金について決定を受けて年金が支給された。労災保険では、後遺症は頑固な神経症状を残すものとして後遺障害等級12級相当と判断された。
Xは、Y社が有害物質を排除したりばく露防止措置を講じなかった結果、化学物質過敏症を発症したのであり、不法行為による損害賠償責任または安全配慮義務違反による損害賠償責任があるという主張に基づき、Y社に対して損害賠償請求訴訟を起こした。
判決の要旨
1、化学物質過敏症と予見可能性
そもそも、化学物質過敏症は生活環境中の極めて微量な化学物質に接することによる症候群で、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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