【イラストで学ぶリスクアセスメント】第154回 作業構台出入口での災害

2017.09.12 【安全スタッフ】
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 昭和29年に創業した事業場は、化学工場なので「爆発・火災が発生」しても住民に影響が少なく、「化石燃料を船で大量運搬」が可能な住宅地から離れた河川の堤防横(造成費が少額)にある。化学工場は電気を多量に消費するので、創業当初は電力会社から屋外に設置(河川敷と同じ高さ)したキュービクル(Cubicle)式高圧受電設備〔*1〕(以下、「受電設備」という)に6,600V3相で受電し、400V.200V.100Vに変圧して工場内に供給していた。

〔*1〕50kVA以上、4,000kVA以下の小中規模施設の変電設備として利用。

 しかし、昭和30年後半の連続した台風〔マメ知識〕で、複数の支流が氾濫(はんらん)して、「屋外の受電設備は60cm程度冠水」し、工場はしばらく操業停止した。この自然災害で懲りたので、工場内に高さ1.8mの作業構台を設置し、所轄の消防署に「キュービクル設置届」を行い、受電設備はその上に設置。出入口は工場外側に、内幅1.2m・傾斜角38度・両側手すり付きの階段を設置した。なお、工場周囲は高さ1mの鉄筋コンクリート壁、工場2カ所入口は鉄扉の左右引込み式とし、工場内の主要機械は順次1m程度鋼材で嵩上げした。

〔マメ知識〕
◆〔台風〕「台風域内の最大風速が17.2m/S(34ノット)以上」に「発達した熱帯低気圧を台風(タイフーン:typhoon)」と定めている〔昭和28年6月から〕。
◆〔忘れてはならない昭和の大型台風〕(a)室戸台風〔昭和9年9月21日:約3000人の死者・行方不明〕⇒山側に住宅地を順次造成、(b)伊勢湾台風〔昭和34年9月26日:約5100人の死者・行方不明〕⇒大規模堤防の築造、(c)洞爺丸台風〔昭和29年9月26日:1155人の死者・行方不明(国鉄の青函連絡船洞爺丸の乗員・乗客1139人が死亡)日本史上最悪の海難事故〕⇒青函トンネルの新設(d)狩野川台風〔昭和33年9月27日:1169人の死者・行方不明〕⇒狩野川放水路の築造。

バランス崩して墜落

 2011年に「東日本大震災」が発生〔*2〕し、「帰宅困難者対策」が社会問題となり、当事業場では3年前に、受電設備の横に作業構台を増設して災害備蓄倉庫〔*3〕(以下、「防災倉庫」という)を設置。受電設備と備蓄倉庫は、同一断面とし作業者が往来可能とし、防災倉庫側の昇降設備は1日1回しか使わないので、高さ1.5mの「作業台を仮置き」とした。

〔*2〕機械式立体駐車場は、電源喪失で使用不可となり、多数の社員が帰宅困難となった。
〔*3〕3日間複数人が滞在できる非常食品(水は3ℓ/人)、非常用トイレ、ガスコンロ、車載スマホ充電器、LEDのヘッドランプ、携帯ラジオ、毛布など。
〔記〕当連載の地震関連記事は、「第119回・118回・72回・3回」に記載。

 受電設備点検の社員Aは、工場の外側の出入口に行くより、防災倉庫の階段形状の作業台の方が事務所から近いので、毎日この作業台を利用し昇降していた。定期点検を終え、いつもは工具箱は置きっぱなしだったが、他の場所で使う必要が生じ、工具箱を右手で持って降りているとき、作業台がぐらついたので、バランスを崩して墜落し、頭も強打した。

不安全な状態:(1)作業台を作業構台に固定しなかった、(2)昇降面の「傾斜角60度の作業台」両側に手すりがなかった。
不安全な行動:(3)Aは保護帽を着用しなかった、(4)「工具箱を右手」で持ちながら、「昇降面を背」にして降りた。
不安全な管理:(5)当事業場の監督者は、防災倉庫の横に作業台を置けば昇降設備(踏面があれば階段、また高低差1.5m以内は手すり不要)と思っていた。

<リスク基準>
 ①危険状態が発生する頻度(他の場所でも同様)は、頻繁「4点」、②災害に至る可能性は、可能性が高い「4点」、③災害の重篤度は重傷「6点」。
<リスクレベル評価>
 リスクポイントは「4+4+6=14点」なので、リスクレベルは「Ⅳ」となります。

平成29年9月15日第2290号 掲載
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