【人工知能が拓く未来~人事労務分野への影響~】第3回 消えていく職業 半数の人が代替可能 経理事務職などで自動化/青木 俊介
生産性向上に寄与へ
連載1回目では、ディープラーニングというブレークスルーが起こり、人工知能が飛躍的な進化を始めたことを紹介した。こうした進化によって、人工知能が人間の仕事を奪っていくのではないかという懸念が急速に広まっており、真剣な議論が始まっている。
オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授、カール・ベネディクト・フレイ博士の2013年の研究報告では、米国労働省のデータから702の職種について、IT化が及ぼす影響について分析している。報告によると、今後10~20年という早い段階で、約半分が失われる可能性があるという。実に米国の総雇用の47%に相当する職種が職を失うリスクが高いカテゴリということになる。そのうち、消える確率が最も高いとされている職種として挙げられているのは、「電話販売員」「保険の審査担当者」「時計修理工」「税務申告者」「データ入力者」「融資担当者」「受付、レジ係」などである。
オズボーン氏らは、野村総合研究所(NRI)とともに日本の労働者への影響も調査を行い、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットで代替可能という試算結果を発表している。601の職種が対象で、日本で最も自動化の可能性が高い職業(別掲)は、「鉄道の運転士」、「会計・経理事務職」「税理士」「郵便窓口」「タクシー運転手」「受付」等であるという。
こうした自動化の導入により、日本で課題となっている労働人口の減少や生産性の向上などにプラスの効果をもたらすが、逆に熟練労働者の技能が失われる、賃金格差が拡大するといったリスクもあると指摘する。