【人工知能が拓く未来~人事労務分野への影響~】第3回 消えていく職業 半数の人が代替可能 経理事務職などで自動化/青木 俊介

2016.04.18 【労働新聞】
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 人工知能やロボットが人間の能力を超えてしまい、いままで人間が就いていた仕事が奪われていく社会では、人間の役割はどう変わっていくのだろうか。実は、仕事を奪うのは人工知能やロボットを所有する人間なのだと東京大学の柳川範之教授は指摘する。人工知能が学習能力を獲得しても、解くべき問題自体を設定することはできない。コンピューターやロボットが自らの意思で仕事をし、人間の仕事を奪うのではなく、それを所有し使用する人間が他の人間の仕事を奪うのが現実だという。

 また、人工知能の特性として、過去のデータが、数値化された状態で大量にある問題にしか適用できない。めざす目標があいまいだったり、過去のデータがない未知の状況の中でも判断が必要とされる場面では、意思決定をするのは人間の仕事になるだろう。

 そして、最大の問題として、判断の責任を取ることは人間にしかできない仕事である。人工知能の判断結果は、それを所有したり使用した人間が最終的に責任をとるしかない。この仕事は人間が存在するかぎり人工知能に置き換えることは不可能だろう。

 人工知能やロボットの普及によって経済モデルが大幅に変わると、人間の職業選択はより自由になっていくのではないかという意見もある。IT技術の普及は、経理や事務のアウトソースやテレワークを容易にして個人事業主の数を大幅に増やしたが、人工知能でも同じような現象が起こるという予測だ。

 東京大学の松尾豊特任准教授によると、多くの人が起業家となって小規模な個人事業を経営し、その会社の業務を人工知能とロボットが行うという世界がくるという。その結果、世の中のあらゆる要求に応えるニッチビジネスが次々と生まれていくのではないかと予測する。

 以上3回にわたって、人工知能の進化と人事労務分野への影響をみてきた。確実にいえることは、人工知能の技術は社会に変革をもたらすこと、そしてそれがもう始まっているということである。人間の強みは変化に強いことであり、その学習能力を活用して変化に対応する組織となることが重要なのではないか。この連載が学習のきっかけになれば幸いである。

筆者:ユカイ工学㈱ 代表 青木 俊介

平成28年4月18日第3061号13面 掲載
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