【人事学望見】第1095回 内部告発と報復的処遇 32年間も退職せず忍従して闘う
2017.04.10
【労働新聞】
内部告発で懲戒処分に当たらないとされるには、①告発内容の正当性②目的の正当性③手段・方法の妥当性が認められる場合といわれている。しかし、これは処分の不当性について、法廷での争いになったとき、裁判所が吟味する要点であり、訴えねば放置される可能性が高い。
正当な行為か否かで判断
内部告発以降32年間もいじめに耐えた猛者がいる。普通なら、提訴するか退職するのだが、トナミ運輸事件(平17・2・23富山地判)の原告は、兄、母親、義兄にまで及んだ暴力団による脅しにも屈せず、妻が「辞めてくれ」と頼んでも振り切ってきた。
事件のあらまし
Aは1974年の岐阜営業所時代、会社が過当競争を避けるため、同業者と談合し、違法な割増運賃を取っていた状況に不満を持ち、まず、最高幹部が岐阜営業所を訪ねてきたときに直訴したが、幹部は「役員会で決めたことだ」と取り合ってくれなかった。
そのため、Aはトラック業界の闇カルテルを全国紙名古屋支局へ告発。Aが訴えた業界のカルテル体質や会社の実態が載った新聞は、「50社ヤミ協定か東海道路線トラック」というみだしで紙面を飾った。さらにAは、公正取引委員会、関連の労働組合、運輸省,日本消費者連盟、国会議員に告発を続けたが、会社も黙ってはいなかった。
75年以降、Aは、その報復措置なのか研修所に異動を命じられ、6畳程度の個室に1人勤務した。
以来32年間、…
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平成29年4月10日第3108号12面 掲載