【裁判例が語る安全衛生最新事情】第204回 住友重機アスベストじん肺事件 補償義務完了に関する念書の効力 横浜地裁横須賀支部平成25年2月18日判決
2014.07.01
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、昭和16年に被告Y社との間で雇用契約を締結し、概ねY社の浦賀本工場において造船作業を続け、一旦1年ほど退職した時期はあったが、昭和60年6月30日に定年退職するまでの間、造船作業に従事してきた。亡Aは、Y社の在職中である昭和54年7月、昭和56年2月、昭和57年2月、昭和58年2月、昭和59年1月、同年11月に、それぞれじん肺管理区分2の認定を受けていた。その後、亡Aは、平成3年4月の検査で法定合併症である続発性気管支炎の認定を受けて労災補償を受け、平成12年9月に肺がんで死亡し、所轄労基署長は、相続人Xに対して遺族補償年金の支給決定をした。
なお、亡Aは、生前の平成10年11月30日に、所属していた労働組合がY社と締結していたじん肺罹患者との賠償に関する合意書では賠償の対象とならないものの、その合意書に準じる覚書により、念書を提出してY社より障害補償金として金298万円を受領した。その署名押印した念書によれば、じん肺罹患に関する補償義務の一切が完了したことを確認し、今後何らの異議を述べず、何らの請求をしない旨が記載されていた。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成26年7月1日第2213号 掲載