【裁判例が語る安全衛生最新事情】第176回 TOTO事件 組長の注意義務違反と使用者責任 大津地裁平成22年6月22日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y1社は窯業・土石製品の製造販売を行う会社で、滋賀工場において衛生陶器などを製造していた。Y1社は、その一部である水洗便器のタンクの生産ラインの製造工程を、被告Y2社に製造業務委託契約を締結して生産を任せていた。Y2社の社員で、その生産ラインの組長が被告Y3である。亡Aは派遣会社であるC社の社員であり、Y1社との派遣契約によりY1社の滋賀工場に派遣され、被告Y3の指揮の下に、その生産ラインの作業に従事していた。
その生産ラインは、水洗便器のタンクを製造するラインであるが、タンクは胴と蓋で一組となるが、胴と蓋はそれぞれ別の成型機で原型が作られる。蓋成型機では、まず前方に5度傾斜し、型に長石、陶石、粘土、水を混合した泥漿が流し込まれ、その後20度まで傾斜し、加圧により泥漿の水分を飛ばして成型を行った後、傾斜から起きあがり脱型して製品がコンベアに流されるという流れになる。その製品が脱型してコンベアの上に流された際に、蓋成型機のコンベア側に2つの設置されている光電管が感知し、脱型完了の合図が出て、次の製品を作るための工程に移るが、脱型がうまくできずに光電管が感知しないと、脱型完了の合図ができずに、次の製品を作るための工程に移行しないというトラブルが発生する。
Y1社では、本件トラブルが発生した場合には、蓋成型機を一旦停止させ、手動操作によって光電管が感知できるよう、脱型に失敗した製品の場所を調整したうえで再び蓋成型機を作動させるというマニュアル(本件マニュアル)を定めていた。しかし、本件トラブルが発生する度に蓋成型機を停止させると生産性が落ちることから、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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