【産業カウンセリングの現場から】第165回 「組織的公正」が健康に与える影響/井上 彰臣
2018.09.10
【安全スタッフ】
個人対応だけでは不十分
私は「職場の心理社会的要因とその健康影響」をテーマに調査研究を行う傍ら、非常勤の産業カウンセラー、精神保健福祉士として、民間企業のカウンセリング、ストレスチェック、メンタルヘルス研修に携わってきました。カウンセリング業務では、メンタルヘルス不調によって休職した方の職場復帰や、職場復帰後のフォローアップを中心に支援を行ってきましたが、どれだけ本人が努力をしても、再休職に至ってしまう事例が少なくなく、個人対応だけでは限界があることを痛感してきました。
とくに近年、成果主義の導入や非正規雇用の拡大など、処遇格差と密接に関わる人事方針を打ち出す企業が増え、企業と従業員との関係が大きく変化してきました。そのようななか、「組織的公正」と呼ばれる概念が、従業員の健康に影響を及ぼす心理社会的要因として注目されています。
業務パフォーマンス向上に寄与
組織的公正は、職場組織が従業員を公正に扱っているかどうか(すなわち、従業員が所属組織を公正な組織と感じているかどうか)に着目した概念で、(1)分配的公正、(2)手続き的公正、(3)相互作用的公正の3つに大別されます。…
執筆:北里大学医学部公衆衛生学単位講師 井上 彰臣
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平成30年9月15日第2314号 掲載