【裁判例が語る安全衛生最新事情】第315回 神奈川建設アスベスト事件① 国の規制権限不行使あったと認めず 横浜地裁平成24年5月25日判決
2019.02.25
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告らは、主として神奈川県内で建設作業に従事した作業員またはその遺族ら75人であり、いずれも建設工事によって石綿粉じんにばく露して、石綿関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫など)にり患したと主張した。被告は国と石綿含有建材を製造販売していた企業44社である。
被告国には、石綿粉じんにばく露しないように、労働安全衛生法関係、建築基準法関係の規制権限を行使すべきであったのにそれを怠ったとして、国家賠償法1条1項に基づく責任を、被告企業らには、民法719条の共同不法行為、製造物責任法3条により損害賠償請求訴訟を提起した。
本件は、建設アスベスト訴訟の集団訴訟としては、初めて判決に至った注目すべき事件。今回は、被告国の責任を紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告国の規制権限の不行使
(1)建築基準法2条7号から9号までの規制権限
建築基準法は、もともと当該建築物の居住者および当該建築物の近隣に居住する者を保護の対象にするもの。しかしながら、耐火構造や防火構造に関する規定では、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成31年3月1日第2325号 掲載