【裁判例が語る安全衛生最新事情】第316回 神奈川建設アスベスト事件② 製造販売企業の共同不法行為成立せず 横浜地裁平成24年5月25日判決
2019.03.12
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告らは、主として神奈川県内で建設作業に従事した作業員またはその遺族ら75人であり、いずれも建設工事で石綿粉じんにばく露して、石綿関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫など)にり患したと主張した。被告は、国と石綿含有建材を製造販売していた企業44社。この44社は、国土交通省と経済産業省が作成した「石綿(アスベスト)含有建材データベース」により特定された建材を製造販売していた企業である。
被告国に対しては、国家賠償法1条1項に基づく責任を、被告企業らについては、民法719条の共同不法行為、製造物責任法3条により損害賠償請求訴訟を提起した。
本件は、建設アスベスト訴訟の集団訴訟として初めて判決に至った注目すべき事件。今回は、被告企業らの責任を紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、民法719条1項前段の責任
同項前段は、数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたとき、各自連帯して、被害者に生じた損害を賠償するという規定である。この場合、各行為者の行為に関連共同性があることのほかに、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成31年3月15日第2326号 掲載