【裁判例が語る安全衛生最新事情】第317回 神奈川建設アスベスト控訴事件① 一審判決覆し国の責任認める 東京高裁平成29年10月27日判決
2019.03.26
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告などは、主として神奈川県内で建設作業に従事した作業員またはその遺族ら75人であり、いずれも建設工事によって石綿粉じんにばく露して、石綿関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫など)にり患したと主張した。被告は国と石綿含有建材を製造販売していた企業44社である。
被告国に対しては、石綿粉じんにばく露しないように、労働安全衛生法関係、建築基準法関係の規制権限を行使すべきであったのにそれを怠ったとして、国家賠償法1条1項に基づく責任を、被告企業らについては、民法719条の共同不法行為、製造物責任法3条により損害賠償請求訴訟を提起した。一審判決(横浜地裁平成24年5月25日)は、被告国、被告企業の責任をいずれも否定し、原告らの請求を棄却した。本件はその控訴審判決である。
今回は、被告国の責任について紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、昭和55年末までの建築現場における環境の認識
遅くとも石綿の製造・取扱いについての特別監督指導計画の目標期間が満了する昭和55年末ころまでには、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成31年4月1日第2327号 掲載