【裁判例が語る安全衛生最新事情】第320回 九州建設アスベスト事件① 粉じんばく露防止で規制不行使が違法 福岡地裁平成26年11月7日判決
Ⅰ 事件の概要
本件は、建築物の新築、改修、解体作業などに従事した作業従事者またはその相続人である原告ら51人が、その現場で使用された石綿含有建材から発生した石綿粉じんにばく露したことによって、石綿関連疾患(石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚)にり患したとして、被告国と被告建材メーカー企業43社を訴えた事件である。
被告国に対しては、石綿含有建材についての規制権限を有していたとして、規制権限を行使しなかったことをもって、国家賠償法1条1項の責任を求め、被告企業に対しては、石綿含有建材を製造販売していたことが石綿ばく露の原因であったとして民法719条1項前段または後段の共同不法行為の規定により、また石綿含有建材を製造販売していた企業に対しては製造物責任法3条による損害賠償責任を追及した。
今回の①では、被告国の責任について紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、建材メーカーなどに対する警告表示の義務付けに関する規制権限不行使の違法性の有無
国は、昭和50年10月1日の特定化学物質等障害予防規則(特化則)改正時以降、規則制定権限を行使して、使用者に対して労働者に防じんマスクを使用させることを規則をもって義務付けるとともに、石綿含有建材(石綿含有量が重量5%以下のものを含む)への警告表示や建築作業現場(石綿含有量が重量5%以下の石綿含有材料を取り扱う建築作業現場を含む)における警告表示(掲示)の内容として、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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