【リレー方式紙上討論 解雇無効時の金銭救済】第19回 完全補償ルール提案 パラダイムの転換促す(終)/土田 道夫
2019.05.23
【労働新聞】
大内伸哉=川口大司編『解雇規制を問い直す 金銭解決の制度設計』(有斐閣・2018)は、現在行われている政策的議論(「検討会報告書」「技術的検討会」)とは異なり、全く新たな観点から解雇の金銭解決制度を提案し、解雇規制のパラダイム転換を唱えている。
本書は、まず、解雇を「許されうる解雇」と「許されない解雇」(差別的解雇、法律禁止解雇等)に区分する。「許されない解雇」について解雇無効ルール(解雇権濫用規制〔労契法16条〕参照)を維持しつつ、「許されうる解雇」については解雇無効ルールの適用を否定し、その代わり、使用者が負担すべき雇用終了コストとして完全補償ルールという金銭解決制度を導入する。
「生涯所得」が基準に
完全補償ルールとは、解雇による生涯所得の低下分の補償を意味し、「現在の労働条件で働き続けた場合の生涯所得」から「再就職市場に参加した場合に予想される生涯所得」を控除したものを意味する。そこで、その補償額は、…
筆者:同志社大学 法学部 教授 土田 道夫
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令和元年5月27日第3210号10面 掲載