【人事学望見】第1196回 職場復帰で変化した判例 本人希望強まり薄れた治癒要件
2019.05.30
【労働新聞】
傷病休職後の職場復帰については、当初、従前の業務が遂行できる「治癒」を要件としていたが、平成10年の最高裁判決では労務の提供が十全にできないとしても、諸般の実情に照らし他の業務について労務が提供でき、本人も希望していれば使用者に義務が課せられるとされた。
従前の職務にこだわらず
職場復帰に関する重要判例とされている片山組事件(最一小判平10・4・9)を紹介しよう。
事件のあらまし
Y建設会社に入社して以来、Aは21年以上の長期にわたって建築工事現場における現場監督業務に従事してきた。平成2年夏、Aはバセドー病にり患しているとの診断を受け、以後通院して治療を受けたが、Aはこの事実をY社に告げることなく監督業務を続けていた。同3年2月以降は、次の監督業務が生じるまでの臨時的一時的業務として工務管理部において事務作業を続けていたところ、同年8月、F工事現場において現場監督業務に従事せよとの業務命令を受けた。
これに対しAは、バセドー病であることを理由に、現場作業に従事できないことをY社に申し出た(後日、医師の診断書および本人作成の病状説明書を提出)。Y社は、Aが現場監督業務に従事することは不可能であると判断して、Aに対し同3年10月1日から自宅にて治療せよとの業務命令を発令した。…
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令和元年6月3日第3211号12面 掲載