【新任担当者のための基礎から学ぶ労働法】第2回 労働契約法①―雇用・労働契約の性質― 複数の権利関係が発生 労務指揮と秩序維持など/仁野 直樹
2012.01.23
【労働新聞】
今回は、「労働契約」というものがそもそも何なのか、という点について全体的に触れる。売買契約が単純な物と金の交換にとどまらず、色いろな義務を内包しているように、労働契約から生まれる権利義務関係も様ざまなものがある。労働契約によって具体的に我われがお互いにどんな立場に立つのか、法令解説も含めて概括的にみていく。
明治期に民法によって定義付けられた「雇用契約」は、使用者と労働者の間の現実の格差を考慮に入れていなかったため、憲法の要請に基づき、労働法による修正を受けることとなった。その際労働法は、このような労務を提供し受領する契約関係を、新たに「労働契約」と呼ぶことにした。両者の区別は難しいが、やや乱暴にいえば、雇用契約と労働契約は、事実としてはほぼ同じ社会的関係を指している。しかし雇用契約というときには両者の対等性が念頭に置かれ、労働契約というときには労働者保護の側面から労働法の規整を受けることが前提になるので、言葉の持つ意味は大いに違う。もっとも、現在のところ、労働法の規整を受けない雇用関係はほとんど存在しないので、単に「労働契約」とだけ呼ぶことが多い。
民法の特則として誕生
こうした労働契約の枠を形作っている法律として、最も基本的な部分を担っているのが、民法と労働契約法(労契法)である。
まず民法は、…
筆者:石嵜・山中総合法律事務所 弁護士 仁野 直樹
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら
この連載を見る:
平成24年1月23日第2857号11面 掲載