【人事学望見】第850回 ユニオン・ショップ協定の実効性 大部分が「尻抜け」で解雇少ない
わが国の労働組合は、その過半数がユニオン・ショップ協定を有している。ユ・シ協定では、労組を除名・脱退した場合には、会社は「原則解雇する」「解雇する。ただし会社がその者をとくに必要と認める場合には解雇しないことができる」という尻抜けユニオンが大部分だ。
組合選択の自由がカベに
これでは、本来のユ・シ協定が持つ機能は、まったく果たしていないのも同然だが、「主たる機能は、使用者による当該労働組合の承認にある」(菅野和夫「労働法第9版」)。労組活動が華やかなりし頃は、ユ・シ協定について、本来の機能を持たせよという要求が強かったが、労組の立ち位置の変遷によって、声は聞かれなくなった。
横森金属工業は、組合員総数が500人を超えており、地元の労働組合協議会でも同労組から役員が選任されている有力組織である。目下、執行委員会では、12春闘の賃上げ要求額決定に精力的に取り組んでいる。しかし、ナショナルセンターの要求額が、全労働者「1%」確保だから、意気は上がらない。休憩中に役員歴30年というベテラン執行委員の佐々木顧問が、お茶を飲みながら若手の委員を集めて蘊蓄を傾けていた。
「うちでも当初は、労使対立が定番の状態で、スト権も毎年成立していた。ユ・シ協定が締結されていたから、管理職を除く社員はイコール労組員ということだから、会社と対等の立場で交渉のテーブルについたものだ。高度経済成長時代から、労使協調路線の台頭が顕著になり、管理職予備軍が中心になって、第2組合の成立が図られ、当然、第1組合は彼らを除名し、会社に解雇を迫ったのだが、尻抜けユニオンだから、組合選択の自由という反論に遭い、要求はまったく無視されてしまった。…
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