【人事学望見】第853回 少額訴訟制度の魅力は何か 一期日真理の原則に沿って即決
2012.02.27
【労働新聞】
60万円以下の金額の返済を求める少額訴訟裁判は、雇用関係のトラブルの解決にも役立っている。統計資料はやや古いが、平成11年1~10月までに全国の簡易裁判所で扱った少額訴訟は、8292件に上っている。地裁別では、東京が1645件で圧倒的に多い。
60万円以下の賃金など
これを雇用関係トラブルと想定される類型別の「賃金」でみると、東京地裁は115件(7%)で、2位の大阪552件中41件(7.4%)の約2倍となっており、事業所数にほぼ比例している。
「何のかんのといいわけして、まだ残りの賃金を支払ってくれないんだ。これはやっぱり労働基準監督署に申告するしかないだろうな」
本田一郎は、毎月のように賃金遅配が続く町工場を辞め、目下失業中だが、自己都合だったため、雇用保険の基本手当は給付制限にかかり、懐具合はひどい状態だった。相談を持ちかけられた中山信也は、高校時代の同級生が苦境に立たされているのを気の毒がり、同僚で大学法学部を出て人事課に配属されている原田健二に、お知恵拝借という手を使ったがどうも心許ない。
「そりゃあ大変だなあ。しかし、法学部を出て、人事課にいるとはいっても恥ずかしながら専門的知識は丸っきりないから、課長に聞いてみるよ」
「同情はするが、不払い賃金はいくらくらいなんだ。それによって対応を図らなければならんからな」
「2カ月分で40万円ちょっとになるらしいんですよ」…
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平成24年2月27日第2862号12面 掲載