【人事学望見】第855回 転勤シーズン到来と単身赴任 「共働きだから」で拒否できない
使用者が配転を命ずるには、まず、労働協約や就業規則によって配転命令権が労働契約上根拠付けられる必要がある。就業規則に配転を命じ得る旨の包括規定が設けられており、これに基づいて実際上も頻繁に配転が行われているという場合には、配転命令権自体は肯定される。
余裕持って 発令が親心に
転勤命令が発令される時期になり、西川製作所の幹部社員はやや落ち着きを欠いているようにみえた。海外事業所は東アジアに3カ所、欧米の取引先6カ国に事務所があるが、これらは定期異動とは別に行われる。業務命令として会社が一方的に発令するのではなく、長期雇用システムの一環として位置付けられているからだ。
4月1日付けで発令される異動命令は国内だけ。それぞれが家庭内の事情を抱えており、結局のところ「単身赴任」を選ばざるを得ない者も多数いる。転勤辞令を出すに当たっては、個別の事情を考慮する建前となっており、約1カ月前に打診される。
「個別の事情を考慮するとはいっても、毎年恒例のことだから、最小限ということになるのは、やむを得ないところだろう。今年の場合は、やむを得ない事情があると訴えてきたのは何件だ?」
人事担当常務が議長になって、人員配置見直し会議を行っており、横森常務がその席上、中心になってヒアリングをしている山崎人事課長に聞いた。
「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生ずる、と思われるのは1件だけです。転勤・異動は出世の一里塚ですから、単身赴任を覚悟している者が3人程度発生しますが…」…
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