【人事学望見】第867回 時間外労働および賃金の端数処理 1カ月単位だけで日単位はダメ
2012.06.11
【労働新聞】
労働者の平均給与所得は、97年に比べて、5%下がったままの状態が続き、労働側の分配率向上の訴えは、今年の賃上げ闘争でも経営者の耳には達しなかったようだ。それどころか、再び、賃上げか雇用維持かという議論を持ち出して、労働側の不興を買ってさえいる。
労基法上は全額払い違反
分配率が凍結されれば、デフレスパイラルから抜け出せないのは、当然の理といえよう。物が売れない、企業の収益が下がる、労働者の分配に回らない、故に「物が売れない」という渦巻状の惨状である。とりわけ、東日本大震災やタイの洪水など自然災害による部品供給ラインの立て直しに時間がかかり、現在、やっと復旧状態に落ち着いたものの、貿易立国の目玉商品である自動車と家電への影響は大きく、とくに後者の場合、大手各社が中心商品だったテレビで韓国に大きく水を開けられ、何千億円単位の営業赤字が計上されている。
「メモリ最大手が台湾企業に身売りするなど、日本沈没も現実化してきたようだね。これで原子力発電所の稼働停止による生産調整が行われると、壊滅的打撃になろう」
労働者各人別の賃金明細書を金融機関に通知するための作業をしていた大山製作所経理課の岡田主任が、だれにいうというわけではなくぼやいていた。日本経済の動向を語りながら、やっていることは、賃金計算の端数処理だから、周りの連中は主任のぼやきを苦笑しながら聞いていた。…
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平成24年6月11日第2876号12面 掲載