【人事学望見】第892回 労組嫌いの社長に悩む専務 学説・判例では偽装解散も有効
労働組合嫌い、という中小企業経営者は枚挙にいとまがない。結成に圧力をかけると直ちに労働委員会に訴えられ、不当労働行為として使用者責任を問われてしまう。策を弄して会社を「偽装解散」し、新たに会社に忠実な社員だけを集めて別会社を設立する例も多い。
憲法上でも自由を認める
「偽装解散というのは、労組を消滅させるために、会社を解散した後、新会社を設立して従来と同様の事業を行うことをさす。この場合、実質的に同一性を有する新会社は、旧会社の行った不当労働行為について、使用者の地位に立ち、責任を承継する、というのが常識的な考えで疑問の余地はない、と思うだろう?」
国際貿易株式会社は、主に中国や東南アジアを取引先に持ち、輸出入事業を営んでいる。従業員は現地事務所の駐在員を含めても、100人に満たない典型的な中小企業だった。ここに労組設立騒ぎが起こり、幹部一同がその対策に大わらわの状態である。
会社ナンバー2の位置にいる青木専務が吉村社長の意向を受けて設立メンバーの説得に当たっているが、一向に機運は下がらなかった。そこで持ち出したのが「偽装解散」である。中小企業団体の役員を務める吉村社長がその提案に対して、大きな疑問を持ったのは当然だろう。
「それがですねえ会社解散・事業廃止が雇用の喪失をもたらし、労働者に深刻な不利益を与えるから無効、という考えが必ずしも相当性を持っているとはいえないという学説が出ているのです」…
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