【人事学望見】第1202回 出向命令時の個別的同意 地位と労働条件維持なら不必要
2019.07.11
【労働新聞】
出向を命じるには労働者の承諾(民法625条)が必要だが、就業規則等に出向を命じ得る規定があり、出向によって賃金・退職金その他労働条件の面での不利益が生じないように制度が整備され、出向が実質的にみて配転と同視されるような場合には個別同意を要しない。
裏付規定は必須要件だが
鉄鋼業界の構造的不況の下において、経営の合理化の一環として出向が実施され、トラブルに発展したのは新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件(最二小判平15・4・18)である。
事件のあらまし
株式会社Yは、社内の構内運送業務のうち鉄道輸送部門の一定の業務を訴外X社に業務委託し、業務委託に従事していたAらにX社への出向(在籍出向)を命じた。これに対しAらは、本件出向命令の無効確認を行った。
なお、Aらの入社時および本件出向命令発令時の就業規則には業務上の必要性に応じて社外勤務があり得る旨が定められており、Aらに適用される労働協約にも同旨の規定があった。そして、労働協約である社外勤務協定には、社外の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格、昇給等の査定その他処遇等に関して出向労働者に配慮した詳細な定めがあった。
一審(福岡地判平8・3・26)では、本件出向命令は有効であるとしてAらの請求が棄却され、原審(福岡高判平11・3・12)でも一審判決が維持されたことからAらが上告した。…
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令和元年7月15日第3217号12面 掲載