【人事学望見】第1205回 計画年休めぐる労使紛争 労使協定は反対労組も拘束する
年休取得率が相変わらず低迷している現状を打開するため、使用者による年5日の時季指定(付与義務)制度がスタートしている。わが国の年休の取得率が低いのは、労働者本人が請求しない限り取得は行われないという制度にあるから、との視点での発想といわれている。
10日程度の夏休みを実現
計画的付与制度により、労使協定で年休の取得時季を特定したときは、これに反対する労働者に効力が及ぶか、という興味深いテーマで争われたのは三菱重工業長崎造船所計画年休事件(福岡高判平6・3・24)である。
事件のあらまし
労基法改正によって年休の計画的付与の制度が新設されたことから、年休取得促進の観点でY社は2日間を年休の計画的付与にしようと労組に提案した。これに対する団交の結果、従業員の98%が加入する多数組合とは合意に至ったものの、少数組合との合意は成立しなかった。
Y社は、多数組合と年休の計画的付与に関する労使協定を締結し、就業規則にも計画的付与に関する規定を設けて、反対する少数組合も適用対象にして年休の計画的付与を実施した。ただし、従業員の約3割は計画的付与の適用から除外されたことから、結果的に年休取得率は計画的付与を実施する前より低下することになってしまった。
そこで、少数組合の従業員はそのような労使協定は労基法の趣旨に反するもので無効、無効でないとしても年休の取得には従業員の個別同意が必要で、合意していない従業員は拘束されないと主張し計画的付与がなかったものとして年休の残存日数の確認を請求した。…
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