【人事学望見】第1206回 あいまいな持ち帰り残業 時間管理野放しにきついお灸が
2019.08.08
【労働新聞】
36協定は、時間外労働を適法とする効果しかなく、その成立によって労働者が残業する義務が発生するものではないとされている。使用者が労働者に残業を命ずるためには、労働契約上の根拠(就業規則、労働協約、個々の労働契約など)が必要である。
創造性求め社員まかせに
従業員の出退社時刻の管理(労働時間把握義務)に全く関心がない、というのがトラブルの元となったのは十象舎事件(東京地判平23・9・9)である。
事件のあらまし
Y社は、各種書籍・雑誌の企画・編集を行う編集プロダクションである。Aは、Y社の元従業員で、平成19年7月から22年7月まで雇用契約関係にあった。
Aは、分冊百科シリーズの編集・制作を担当するとともに、ライターに記事の執筆を依頼したり、自ら記事を執筆するなどの業務を行っていた。Aの所定労働時間は、午前10時30分~午後7時30分だったが、全体として仕事量が多く所定の出退社時刻を守っていたのでは、担当の業務を終えることは不可能だった。
一方、Y社は締切りまでに良い仕事さえすれば勤務時間の使い方は自由で構わないとの考え方から従業員の出退社管理に全くといって良いほど関心がなく、就業規則はもとよりタイムカードや出勤簿も全く存在しない状態だった。…
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令和元年8月19日第3221号12面 掲載