【人事学望見】第1212回 難しい退職届取消し 人事部長の単独受理権限認める
2019.10.03
【労働新聞】
勢いにまかせて「こんな会社はいつでも辞めてやる」と退職届を提出したものの、冷静になって考えたところやりすぎてしまった、という経験を持つ者は少なくない。まさに軽挙妄動というわけだが、いったん提出した退職届の撤回はすんなりとはいかない。
採用制度と同一ではない
裁判例によると、学生運動の華やかなりしころ、その思想を職場にまで持ち込んでトラブルになった例がかなりの数に上る。大隈鉄工所事件(最三小判昭62・9・18)もそんな1つだ。
事件のあらまし
Aは、大学在学中にX政治団体に加盟していた。昭和47年にYに入社したが、同期入社のBとともに社内でX政治団体の非公然の活動を行ってきたところ、Bの失踪事件に関連して、上司から事情聴取を受けたことをきっかけとして、それまで秘匿していたX政治団体所属の事実が会社に露見したことに強い衝撃を受けた。
Aは、社内における自己の将来の地位に希望を失い、C人事部長に退職願を提出した。Aは、翌日、退職の意思表示を取り消す旨申入れたが、これ幸いと受け取ったYはこれを拒絶した。…
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令和元年10月7日第3227号12面 掲載