【努力義務化は目前!? 70歳までの就業機会確保】第5回 制度の構築 運用は説明責任が必須 企業強くするデザインを/内田 賢
60歳代は余生でなく
骨太方針2019で「70歳までの就業機会確保」が政策目標になっているが、以前から中小企業では60歳代はもちろん70歳代の雇用も進んでいた。人手不足はいつの時代もこれらの企業を苦しめてきたからである。とはいえ、中小企業の高齢者雇用が定年延長によって実現していたとは限らない。
中小企業を訪れると60歳で定年になった高齢者が65歳を超えてもそのまま働いているのをみる。彼らの働きぶりが急に落ちるわけではなく、また、彼らもそれまでと同様に働きたいと考えている。会社と利益は一致し、雇用は継続する。しかも本人が辞める意思がなければいつまでも雇用関係が続くので、実質的には定年なしに等しい。
実態はそうなってはいるものの、中小企業でも少なからず定年延長には慎重だ。正社員としていつまでも雇用が続くことはコスト的に企業を圧迫し、企業からみて貢献度が低い者の雇用契約解消の機会を失することになる。高齢者雇用が定年延長という「制度」で裏付けられていることもあれば、「運用」で進められていることもある。
「運用」の良さは企業や個々の職場の状況によって適宜、迅速に柔軟に対応できることだ。病気がちだが会社に欠かせない社員なので休暇を取得せずとも仕事中に病院に行くことを認めることも可能だ。経営者が職場を納得させれば問題はない。
雇用機会の延長が「制度」ではなく「運用」で行われる場合、問題も生じる。運用なので制度的な裏付けはなく、Aさんに認められてもBさんには認められないということもあり得る。「運用」は突然変えられることもある。働く者にとっては安心感がない。…
筆者:東京学芸大学 教授 内田 賢
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