【裁判例が語る安全衛生最新事情】第332回 ゆうちょ銀行パワハラ事件 指導の範囲でも安全配慮義務違反に 徳島地裁平成30年7月9日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、亡Aの妻であり、唯一の相続人である。亡Aは、平成9年4月に、当時の郵政省に採用され、平成19年10月の郵政民営化に伴い当時の郵便局株式会社の従業員となり、平成23年4月から銀行部門であるY社の従業員となり、地域センターお客様サービス課で勤務した。平成25年7月1日付で貯金事務センターの貯金申込課主任となり、運行担当の業務に従事していたが、平成27年6月に自宅で自殺した。
業務センターの運行担当の主な業務は、国債に関する業務、年金・恩給に関する業務などであり、郵便局との電話応対もあった。貯金申込課の課長はEであり、課内の運行担当には、係長としてBと、主査C、Dがいた。原告Xは、亡Aが自殺をしたのは、C、Dが亡Aにパワハラを行い、EとBはその防止策をとらなかったのであるから職場環境配慮義務違反があったとして、Y社に対して民法715条の使用者責任を負うとして、損害賠償請求をした。
Ⅱ 判決の要旨
1、上司C、Dのパワハラ行為の有無
確かに、C、Dは、日常的に亡Aに対し、強い口調の叱責を繰り返し、その際、亡Aのことをニックネームで呼び捨てにするなどしており、部下に対する指導としての相当性に疑問があると言わざるを得ない。しかし、部下の書類作成のミスを指摘し、改善を求めることはY社における社内ルールであり、主査としての両名の義務であるうえ、亡Aに対する叱責が日常的に継続したのは、亡Aが頻繁に書類作成上のミスを発生させたことによるものであって、CやDが何ら理由なく亡Aを叱責していたというような事情は認められない。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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