【産業カウンセリングの現場から】第188回 人の話を聴くことの大切さ
「人事は神になれ」
今から10年ほど前、まだ私が企業の人事部に勤務していた時の話です。営業本部から新しく人事部に来られた役員から突然「人事は神になれ」と言われました。それまで「お客様は神様です」ではありませんが、人事にとって「お客様は社員。人事は社員のためにさまざまな情報やサービスを提供する」とずっと思って業務をこなしてきた私には、役員のこの言葉がすぐには理解できませんでした。人事が神…? 自分はどうあるべきか? 何ができるか? 常に自問自答しながら悶々と過ごす日々でした。
それからしばらくして、毎年実施していた「異動希望申告・社員満足度調査」の結果が出てきました。これは社員が自分の仕事の現状(繁忙や職場環境など)、人事異動の希望の有無や時期などを、上司を通さずに人事部に直接、記名式で回答するもので、その結果はデータベースとして集計できるものでした。ただ、それまでは集計結果を分析して、定期異動の参考資料としたり、問題があると思われる記載の社員に確認をする程度でした。
ところが、その役員は「全社員一人ひとりに異動希望申告の結果についてヒアリングをしよう」と言われたのです。社員数500人超で人事が数人、しかも全国に拠点があるので、かなり時間がとられます。正直、心の中では「全員とまでは…」と思いました。ほかの人事部員もそう思ったでしょう。でも、あらかじめヒアリング内容を絞り、1人30分から40分で実施することにしました。
すると、どうでしょう。…
執筆:HRプラス社会保険労務士法人 大谷 源樹
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