【2020年新春特別寄稿】雇用類似の働き方の未来 保護対象者の拡大を 労働者概念変更は周到に/鎌田 耕一
保護の対象拡大で対応を――本紙は、2020年新春特別寄稿として、労働政策審議会会長や雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会の座長などを務める、東洋大学の鎌田耕一名誉教授に、雇用類似の働き方の未来について執筆いただいた。鎌田名誉教授は保護のあり方について、当面は保護対象者の拡大によるべきと訴えている。労働者概念拡張での対応は「周到な議論が必要」とした。
170万人と推計
近年、働き方が多様化して、労働基準法上の労働者だけではなく、いわゆるフリーランスを含めより幅広く多様な働き方を選択する人が増えている。こうした人が不利にならないように就業環境を整備する施策が求められている。
「働き方改革実行計画」(2017年3月)が雇用類似の働き方に関する法的保護の在り方について中長期的に検討するという課題を掲げたことを機縁にして、政府においても積極的に議論が行われている。厚生労働省は、17年10月に雇用類似の働き方の実態と課題を検討するため有識者からなる検討会を立ち上げ、この検討会は18年3月に報告書を公表した。これを受けて、労働政策審議会労働政策基本部会は、同部会報告(18年9月)において、労働行政として必要な施策を検討することを求め、厚生労働省は新たに法律、経済学等の専門家からなる検討会を立ち上げ、この検討会は19年6月に中間整理を発表したところである。
雇用によらない働き方は、これまでも、俳優・音楽家などの芸能実演家、大工などの建築業務従事者、ダンプ・トラックの傭車運転者、雑誌などの記事作成を行うフリーランス、企業から業務委託を受けて作業する個人請負、在宅テレワーカーなどの形でみられていた。最近は、クラウドソーシングなどデジタル・プラットフォームの仲介により委託で働く人(クラウドワーカー)が注目されている。
こうした働き方をする人たちがどのくらいいるのか、様ざまな数字が挙げられているが、厚生労働省が要請した調査によれば、事業者から委託を受けて個人で業務を行う者は約170万人いると推計されている(本業が約130万人、副業が約40万人)。
こうした人たちは、形式上雇用によらない働き方であるから、原則として労働基準法、労災保険・雇用保険などの適用がなく、…
筆者:東洋大学名誉教授 労働政策審議会会長 鎌田 耕一
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