【派遣労働者をめぐる同一労働同一賃金】第1回 賃金決定方法は2種類 派遣先の水準と比較 労使協定による決定も/安西 愈
不合理な待遇差解消へ
「同一労働同一賃金」というと「同一の価値(質、量において等しい)をもった労働に対しては、同一の賃金を支払わなければならない」という原則(イギリスでは19世紀に原則化されたといわれる)を意味するのが一般的である。
しかしながら、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下「働き方推進関係法」という)で成立したこの制度には、法律上どこにも「同一労働同一賃金」という言葉は使われていない。それは、「同一労働同一賃金の導入は、仕事ぶりや能力が適正に評価され、意欲を持って働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものである」(働き方改革実現会議「働き方改革実行計画」〈平成29年3月28日〉)とされているとおり、「パート・有期・派遣労働者と通常労働者(無期フルタイム)との間の不合理な待遇の是正」を目的とするものだからである。
それなのに、「同一労働同一賃金」という言葉を正式な用語として政策や団体の文書において使用するのは「ミスリードを招きかねない不適正な用語である」と著名な労働関係の学者が「使用するのをやめるべきである」といった提言をある会でしたことがあるが、これは問題点を物語っているといえる。
わが国のいわゆる同一労働同一賃金というのは、…
筆者:安西法律事務所 弁護士 安西 愈
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