【裁判例が語る安全衛生最新事情】第336回 共立メンテナンス事件 恫喝や揺さぶりにパワハラ行為認定 東京地裁平成30年7月30日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、ホテルや飲食店を経営する被告Y1社に雇用され、平成20年4月1日から平成28年1月まで勤務した。その間、Xは、本社のホテル関係事業部、ホテル営業推進室、その後、現場のホテル勤務で、Aホテル、Bホテル、Cホテル、Dホテルを転々とし、平成26年6月に本社業務企画室の修繕・清掃チームに配属され、客室のメンテナンス業務を行うようになり、平成27年5月初旬に、新たにできた清掃スーパーバイザーチームに加わり、上司は被告Y2であった。
平成27年7月10日、その6日後にリニューアルオープン化するCホテルで、清掃用具の運搬などを行っていたが、当日の午後8時ごろ、指示された仕事が終了しないので、まだ時間がかかるために上司Y2に連絡し当日の業務を切り上げて良いかと確認した。
ところが、Y2からは業務を完了させてから帰るようにと指示を受けたが、午後10時7分にY2にはメールをして完了しないまま、その日の作業を終了した。ところが、7月11日に出勤し、Y2らとともに作業を開始し、Xが7階の客室にいたところ、7階をやっていないではないかなどとY2が述べてXを強く非難し、Xの両手をつかんで前後に揺さぶる暴行を加えた。
その後、Y2はXが作業をしていた7階の客室に来て、Xに対して明らかに恫喝するような口調で、非常用ポリタンクの置き場について昨日自分が指示した場所と違う場所においてある旨を指摘し、仕事をちゃんとやっているのかと何度も詰問し、Xが反論せずにいるにもかかわらず、Xを壁に押し付けつつ、「(自分の言ったことを)やれよ」「分かったか」などと繰り返しXに迫り、壁にXの体ごと押し付け、体を前後に揺さぶる暴行を加え、この暴行から逃れようとしたXが壁に頭部をぶつけるなどした。
Xは110番通報したうえで近隣の交番に駆け込んだ。そして平成27年7月11日に病院で診察を受け、後頭部打撲、頚椎捻挫の診断を受けた。
そして、その後7月15日に心療内科の診断を受け、錯乱状態や不眠症の症状を訴え、適応障害の診断を受けた。そして、XはY1社を休業したが、Y1社は、平成27年10月7日になって平成27年7月12日に遡って休職にし、休職期間の満了日は平成28年1月11日とした。Xは休職を続けて、平成28年1月12日まで復職せず、Y1社はXは退職扱いにした。
Xは、平成27年7月11日にCホテルにおいてY2から暴行を受けたことのみならず、その前からのBホテルでの業務、Cホテルでの業務、Dホテルでの業務についても上司らからパワハラを受けていたと主張し、さらに、Y2の暴行により適応障害になり、業務上の傷病として退職は無効であると主張し(なお、労基署長は適応障害につき、業務上の疾病として認めている)、Y2に対しては不法行為、Y1社に対しては使用者責任があるとして損害賠償請求をした。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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