【企業経営と固定残業代制度】第3回 無効回避対策~イクヌーザ事件など~ 「45~60時間」を目安に 健康管理の視点も重要/横山 直樹
2020.01.23
【労働新聞】
固定残業代の合意が種々の間接事実に基づいて成立しても、固定残業代として組み込む時間の長さによっては公序良俗(民法90条)違反によって無効となる。
固定残業代に関する最高裁判決でこの点について明示的に述べたものが存在しない以上、現時点での実務対応としては、下級審や法改正の動向を踏まえて対応をすることが肝要である。
のみならず、実務対応としては訴訟の有効性を離れて従業員の健康管理の点からも、80時間乃至100時間等の長時間の設定は避けることが望ましい。精算の合意・実態は固定残業代の成立の要件であり、どのみち必要なのであるところ、訴訟リスク・健康管理の点から適切な時間を設定し、労働時間を適切に把握しオーバーする場合は精算し、36協定を意識しながら対応することが望ましい。
近時の裁判例を概観すると、1カ月45時間を限度とする限度基準告示(平10.12.28労告154号)や1カ月80時間以上の時間外労働時間数を労災認定の判断要素とする「脳血管疾患及び虚血性心疾患などの認定基準(平13.12.12基発1063)」を根拠にこの時間数を限度とする裁判例が散見される。
労基法上は残業月60時間許容か
このような裁判例を前提にすると、…
筆者:石嵜・山中総合法律事務所 弁護士 横山 直樹
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令和2年1月27日第3242号11面 掲載