【裁判例が語る安全衛生最新事情】第337回 大島産業事件 事実上の代表のパワハラに企業責任 福岡地裁平成30年9月14日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、長距離トラックの運転手である。被告Y1社はトラックの運送会社であり、被告Y2はその代表取締役である。なお、被告Y3はY2の夫であるが、Y2はY3から命じられて代表取締役に就任していたが、対外的な活動は行っていたものの、Y1社に出社することはほとんどなく、また、従業員の採用や労働条件の決定に関与することもなく、Y1社の実情を深く把握しておらず、Y2自身もY3の方が上位であるという認識であった。そのような状況下で、Xに対しては、以下の①~⑤のような言動があった。
①Xは、平成25年6月30日に大分に配送した帰路に温泉に立ち寄ったために帰社が遅れた。それに立腹したY3は、Xの頭頂部および前髪を刈り、さらに、洗車用スポンジで頭部を洗髪し、最終的には丸刈りにした。
②Xは、同日、Y3が見守るなか、他の従業員から下着姿にさせられたうえ、洗車用の高圧洗浄機で至近距離から噴射され、洗車用ブラシで身体を洗われた。
③さらに、平成25年9月16日、Y3は、Xに対し、下着1枚になって川に入るように命じ、他の従業員に対し、Xにロケット花火を発射するように命じて至近距離からXに向けて発射させた。Xは逃げ出したが、従業員らに石を投げさせた。
④平成25年10月上旬、Xは、会社から失踪した後に復職を認めてもらおうとY1社に戻った際常務取締役に指示されて社屋入口前で、Y3が出社するまで土下座させられた。Y3が出社したが、土下座を止めさせることはなかったので、Xはその後も数時間土下座を続けた。
⑤その他、Y3のブログには、Xが半裸になって花火の発射を受けながら川の中に入っている姿の写真が8枚掲載されていた。また、土下座している写真も2枚掲載されていた。
Xは、未払い賃金の請求のほか、被告Y1社、Y2、Y3に対してパワーハラスメントと評価されるべき不法行為に基づく損害賠償などを請求した。他方でY1社は、Xに対し、Xが業務指示を受けた運送業務を無断で放棄したことにより損害を被ったとして、不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求の反訴を行っている。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Y3の代表取締役性
Y3は、Y1社の代表取締役であったことはあるが、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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