【人事学望見】第1229回 労働契約直前トラブル 損害与えぬ信義則上の義務あり
2020.02.13
【労働新聞】
使用者は、求職応募者が誤解しないよう十分に説明する義務を負う。採用募集時に誤解が生じた場合にはこれを是正し損害の発生を防止する義務もある。これらの義務が尽くされなかったことを原因として損害が生じた場合、使用者は損害賠償責任を負うことになる。
勤務地流動保育に障害が
ブラック企業の存在は、逼迫する人手不足のなかでも相変わらず消えそうにない。最近の裁判例のなかに、労働契約を締結するに当たり、勤務地の限定がなされていないことに対する説明義務違反が問われた珍しいケースがある。シロノクリニック事件(東京地判平31・3・8)がそれだ。
判決の要旨
本件雇用契約において、美容皮膚科を営むYが雇用したAの勤務地は、東京・恵比寿本院に限定していたとは認められない。Aは、雇用契約を締結するに当たり、Yに対して、子供を保育園に迎えに行く時間との関係で、転居先に近い恵比寿本院における時短勤務をする旨を繰り返し伝えていることが認められる。したがって、Yは、Aとの面談を通じて、Aが時短勤務を希望する理由を十分認識していたのであり、Aが恵比寿本院以外に勤務することとなる場合、保育園との関係でAの勤務に支障が生じることは当然に予測できたはずである。
このことに加え、本件雇用契約の締結に当たり数回にわたり面談し、勤務条件について話し合い、そのときAの負担で研修を修了することを求めている。…
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令和2年2月17日第3245号12面 掲載