【特別寄稿】令和時代の「安全健康」を想う ―温故知新に学ぶ―/多田 敏基
行政が「安全衛生」から「安全健康」に名称変更するなど令和の時代に入り、大きな変革期を迎えている。今、改めて、理念、運動論、現場指導のあり方について、「あるべき姿」を温故知新に学んではどうだろう。管理・監督者にとって、現場指導の難しさがいわれる昨今だが、山本五十六の「人は、動かず、育たず、実らず」との言葉は、今日においても人材育成の原則として、色あせることのない教訓を残している。
大きな変革を迎えて
社員の健康問題は、これまで基本的に個人の問題として認識されていたが、今日では法規制の対象となり、さらに、CSRの対象となる時代を迎えている¹)。それだけに、企業は、多様な健康問題への対応が求められ、全産業に関わる「安全健康」時代を迎えている(表1)。近年、「安全衛生から安全健康」と職制変更する企業を見るのも、その反映ではなかろうか。ちなみに、行政当局はすでに「安全衛生」を「安全健康」に名称変更している。
令和の時代、大きな変革を迎えた安全健康管理活動の推進基盤となる理念、運動論、現場指導について、今日の法規制を踏まえ「温故知新」に学び、改めて考えてみたい。
第1は、安全衛生活動の理念としての「安全第一」を考える。
第2は、安全衛生活動の運動論としての「ゼロ災活動」を考える。
第3は、現場指導の「あるべき姿」としての「山本五十六の言葉」を考える。
「安全第一」を考える
「安全第一、安全最優先、安全はすべてに優先する」との言葉は、多くの企業で、企業理念、社長方針として採用され、今日に至っている。近年では「安全文化」なる言葉も散見する。安全健康時代を迎えて、「安全第一」の真意をどこに求めるか、考えてみる。…
執筆:中央労働災害防止協会 東京安全衛生教育センター 非常勤講師 多田 敏基
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